新宿区立新宿歴史博物館では、
学芸員資格の取得を目指す博物館実習生を受け入れています。
令和3年度も約1ヶ月間の博物館実習が行われ、
新宿歴史博物館内だけでなく、漱石山房記念館でも実習を行いました。
実習生による漱石山房記念館のレポートをお届けします。
近代日本文学の作家として活躍を収めた夏目漱石。
「吾輩は猫である」、「坊っちゃん」など名だたる作品を残しました。
そんな彼には多くの門下生がおり、愛されていました。
皆さんは「木曜会」をご存知でしょうか。
漱石を中心に、多くの門下生たちが集まって行われた議論の場です。
作家として名高い漱石ですが、東京帝国大学(現在の東京大学)で教鞭を執っており、
優れた教育者でもありました。
その為、作家として憧れを抱く若者たちだけではなく、
教師としての教え子達も多く集いました。
漱石に会いにくる門下生や来客は次第に多くなり、
週に一度、木曜日の午後を面会日と定めたことから、「木曜会」と呼ばれました。
漱石の晩年は鈴木三重吉、松根東洋城に代わって
「蜘蛛の糸」でも有名な芥川龍之介、久米正雄たち新世代が木曜会に出入りするようになりました。
「古参のメンバーと違って、彼らは遠慮せずに漱石と議論し、漱石もまたそれを喜ぶようだった。
彼らに言わせたいだけ言わせた上で、最終的には漱石が勝つのである。」
(十川信介著『夏目漱石』岩波新書、2016年)
と、なんとも漱石先生の偉大さがうかがえる様な師弟関係を思わされるエピソードも残されています。
漱石山房記念館には、漱石の書斎と客間が再現展示されています。
展示室からは、この書斎で創作活動をする漱石を前に、多くの門下生たちが客間に集う当時の様子も想像できます。
(博物館実習生:佐藤)