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博物館実習生による漱石山房記念館レポート6 漱石の庭〜小説の中の植物たち〜

新宿区立新宿歴史博物館では、
学芸員資格の取得を目指す博物館実習生を受け入れています。
令和3年度も約1ヶ月間の博物館実習が行われ、
新宿歴史博物館内だけでなく、漱石山房記念館でも実習を行いました。
実習生による漱石山房記念館のレポートをお届けします。

漱石山房記念館1階導入展示の「漱石と植物」の展示パネルによると、
漱石山房には、サクラ・ヒノキ・アオギリといった大木から、
季節の山野草、敷地境の生垣や裏庭の花壇に至るまで多種多様な植物が見られたそうです。
漱石やその家族、門下生が残した記録などを元に数えてみると、なんと20種類以上にもなるとか!
特にバショウやトクサは漱石のお気に入りで、ここ漱石山房記念館を象徴する植物でもあります。

漱石山房記念館のバショウとトクサ

漱石は植物を愛でるだけではなく、度々自分の作品にも登場させました。
『行人』には
「二三週間はそれなりに過ぎた。そのうち秋が段々深くなった。
葉鶏頭の濃い色が庭を覗くたびに自分の眼に映った」
(夏目漱石『行人』新潮文庫、平成23年改版)
という一節があります。
葉鶏頭の実物を見たことがない方は見逃してしまうかもしれませんが、
目にも鮮やかな赤色が印象的で、雨の日でも存在感のある植物です。
元来神経質な性分であった兄に、主人公が追い詰められていく日々の中で、
この葉鶏頭の鮮やかな色彩はどのような意味を持って彼の視界に映っていたのか……?
と考えてみるのも良いかもしれません。
漱石の小説の中に登場している植物の特徴や特性に注目しながら、
作品を鑑賞してみるのも新しい楽しみ方になるのではないでしょうか。

漱石公園の葉鶏頭

(博物館実習生:伊藤)

テーマ:その他    2021年9月14日
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