現在開催中の漱石山房記念館特別展
『永遠の弟子 森田草平』の展覧会図録についてご紹介します。
夏目漱石の門下生の一人である森田草平は、
2021年に生誕140年を迎えました。
彼の代表作『煤煙(ばいえん)』は平塚らいてうとの
心中未遂事件の顛末を小説にしたものですが、
今回の図録の表紙デザインは、この『煤煙』第2巻のジャケットからとられています。
作品中、象徴的に登場する、かつて小石川後楽園にあった
東京砲兵工廠の煙突とそこから出る煙が描かれています。
会場には『煤煙』第1巻から第4巻が展示中ですが、
ジャケット写真が図録にも収められていますので、
それぞれの表紙デザインをご覧いただけます。
B5判 41頁 オールカラー印刷 価格 400円(メンバーズ価格 320円)(税込)
特別展期間中(~11月28日(日))限定で、
漱石山房記念館ガイドブックと2冊セット通常価格1200円⇒特別価格800円(税込)で
販売中です。通信販売もご利用できます。
論考として、『「新しい女」の到来-平塚らいてうと漱石』(名古屋大学出版会 1994年)や
『詳註煤煙』(国際日本文化研究センター 1999年)などで知られる
佐々木英昭先生(元龍谷大学教授)の文章
「「迷惑」の功名―“父”漱石と“愛人”らいてう」を収録しています。
展示中の当館所蔵原稿「漱石先生とフオルスタッフ」
(『沙翁復興』7号、1934年)の読み解きなどもあり、
大変興味深くお読みいただけます。
巻末には草平の短篇「病葉(わくらば)」の全文を収録しています。
この作品は若き草平と漱石との師弟関係の始まりとなった記念碑的な作品です。
草平が漱石から初めてもらった手紙には、
「病葉」を読んだ漱石からの感想が綴られていますが、
草平が既に妻を持っていること、ロシア文学を無暗に読んだことが推測されており、
それらが図星であったことから草平を驚かせました。
この手紙の実物は特別展会場でご覧いただけるとともに、
図録にも全文掲載されております。
なお、図録に文学作品を収録するのは異例ですが、
草平作品は現在、新刊では買えないという理由もあり、
ぜひ皆さまにお読みいただきたいという、
本展示担当学芸員の熱い想いから収録にいたりました。
図録をお楽しみいただくとともに、
展示資料のすべては収録されておりませんので、
ぜひ記念館にも足をお運びいただき、
漱石永遠の弟子を自認した森田草平の世界を実際にご覧いただけますよう、
心よりお持ちしております。