夏目漱石は多くの手紙を書いていたことが知られています。
今回は展示している手紙の中から、
漱石の親友・正岡子規宛ての葉書を紹介します。
明治28(1895)年5月30日消印の葉書は、
漱石が松山の中学校に着任直後、
結核療養のために入院していた子規に宛てたものです。
この葉書には七言律詩の漢詩が書かれていますが、
これは2日前消印の手紙に書かれていた4首の漢詩に続くものでした。
そしてそこにはひとり東京を離れて
松山に赴任した漱石が抱えていた
寂しさや緊張感など複雑な思いがつづられていました。
葉書は明治2(1869)年にヨーロッパで誕生し、
日本では明治6(1873)年に取り入れられた新しい郵便制度です。
現在ならばSNSにあたるものでしょうか。
漱石の葉書も、江戸時代から明治初期にかけ
漢学教育を受けた日本の文化人が用いた漢詩を、
新しい通信手段を使って親友に送ったと考えると、
興味深いものがあります。
テーマ:漱石について 2022年1月24日