今日2月9日(水)は漱石の誕生日です。
漱石は、慶応3(1867)年1月5日(新暦では2月9日)、
江戸牛込馬場下横町(現新宿区喜久井町)の名主・夏目小兵衛直克の五男として生まれました。
漱石が生まれた年は、その年の11月に江戸幕府第15代将軍徳川慶喜により大政奉還が行われ、
世の中が大きく変わろうとしている頃のことでした。
漱石は「金之助」と名付けられますが、
それは生まれた日時が干支で庚申(かのえさる)の日の申の刻
(午後4時またはその前後を含む2時間)にあたり、
このときに生まれた子どもは大変出世するか、さもなくば大泥棒になる、
それを避けるには名前に金偏の字を入れればよいとの俗信に従ったためでした。
漱石没後に出版された漱石の妻・鏡子夫人が語る
『漱石の思い出』には、以下のように記されています。
「夏目は慶応三年正月五日に生まれたのですが、
それが申の日の申の時に当たっていました。
その申の日の申の刻に生まれたものは、
昔から大泥棒になるものだが、それを防ぐには
金偏のついた字を名につければよいという言い伝えがあって、
それで金之助という名をつけたということです。
そのかわりえらくなればたいそう出世するものだとこういうのです。」
名前の略称は「金」で、漱石は後年も親しい友人や弟子に宛てた書簡では、
この一文字で署名することもありました。
現在、漱石の生家跡地には、
漱石門下生・安倍能成(あべ・よししげ)の筆による
「夏目漱石誕生之地」の文字が刻まれた記念碑が建てられています。
記念碑は、東京メトロ早稲田駅(2番出口)からでてすぐ、
早稲田前交差点から夏目坂をのぼりかけた左手側にあります。
写真には記念碑のほかに、碑を囲む赤レンガが写っています。
このレンガは漱石の家の蔵に使用されていたものと伝わっており、
昔の名残を偲ぶことができます。
なお、当館にも同じ赤レンガが保管されておりますが、
常時展示はしておりません。
※引用文の表記は夏目鏡子述・松岡譲筆録『漱石の思い出』文春文庫(1994年)
の表記に従いました。