漱石山房記念館に隣接する漱石公園の桜の花びらが舞い散る中、
≪通常展≫テーマ展示「松岡譲の漱石研究-岳父への想い-」が開幕しました。
松岡譲は、『漱石の印税帖』や『ああ漱石山房』など、
夏目漱石に関する数多くの著作で親しまれている作家です。
漱石とのはじめての出会いは大正4(1915)年、
漱石山房で開かれていた文学サロン「木曜会」の時で、
漱石と松岡の交流は約1年という短いものでしたが、
漱石はその後の松岡の作家活動に大きな影響を与えました。
生涯を通じて漱石研究に没頭した松岡が、岳父・漱石について記した文章をとおして、
松岡からみた漱石像に迫ります。
今回は平成29(2017)年に松岡の娘で漱石の孫にあたる半藤末利子氏から寄贈された
「松岡・半藤家資料」を中心に展示しています。
松岡譲『漱石先生』(岩波書店 昭和9年)に収録された「猫の墓」の原稿は、
今回初めてお披露目する松岡譲の直筆資料です。
その横には夏目漱石が門下生で俳人の松根東洋城に宛てた、
「吾輩は猫である」のモデルとなった猫の死亡を知らせたはがきを展示しています。
「猫の墓」とはこの猫の十三回忌にあたる大正9(1920)年に、
夏目家で飼われた生き物たちを供養するため、
漱石の長女・筆子の夫・松岡譲が造らせたものです。(注1)
なお、このはがきは5月7日(金)以降はレプリカを展示予定ですので、
実物をご覧になりたい方は5月5日(水)までにお越しください。
また、新収蔵品のコーナーには、
令和2年度に新しく収蔵した松岡譲≪漱石山房図≫(昭和18(1943)年 紙本着色)をはじめ、
夏目家旧蔵の着物や、漱石が使用していた硯など、漱石ゆかりの資料を初公開しています。
漱石公園の桜はそろそろ葉桜になりそうですが、新緑が美しい季節になりました。
お散歩がてらぜひご来館ください。
(注1)現在、漱石山房記念館に隣接する漱石公園にある猫の墓(猫塚)は、
昭和20(1945)年の空襲で損壊した残欠を再興したものです。