新宿区立新宿歴史博物館では、
学芸員資格の取得を目指す博物館実習生を受け入れています。
令和3年度も約1ヶ月間の博物館実習が行われ、
新宿歴史博物館内だけでなく、漱石山房記念館でも実習を行いました。
実習生による漱石山房記念館のレポートをお届けします。
突然ですが皆さん、博物館や美術館の展示室が少し薄暗いと感じたことはないでしょうか?
漱石山房記念館でも受付や入り口はとても明るいのに対して展示室の照明は薄暗く、
そして少し肌寒く感じることもあると思います。
しかし、展示室の照明が薄暗いのにはちゃんとした理由があります。
博物館の資料は多くが昔に作られたものばかりです。
漱石山房記念館に展示してある資料も当時のものであれば紙とはいえ100年以上前のものになり、
さらに資料の多くには万年筆を使って書かれたインクが付着しています。
紙やインクは光と熱に弱いため強い照明を使用することができないのです。
漱石山房記念館の鈴木館長によると、
漱石山房記念館の2階資料展示室の照度は120ルクスまでに統一しているそうです。
そうすることでインクが日焼けして薄くなることを防ぎ、
資料の損傷を抑え、良い状態で保存することができるといいます。
また、博物館の照度はJIS照明基準総則によって定められた照度で展示することが決められており、
おおよそ20ルクスから1000ルクスの照度の間で資料に合わせて照らしています。
一方で私たちが普段生活するリビングや食卓の照度は50ルクスから1000ルクス、
図書室の照度もJIS照明基準総則により最低でも500ルクスから800ルクスとされており、
漱石山房記念館の2階資料展示室の照明は、図書室と比べてもおよそ4分の1ほどの照度しかありません。
そのため、展示室の照明が少し薄暗く感じてしまいます。
しかし、展示室の照明は資料保存のために貴重なものや価値のあるものほど照度を低くしている
ということを知った上で展示を見てみると、資料の持つ価値や重要性が分かると思います。
※ルクス(lx)照明器具によって照らされた場所の明るさの値
※参考資料
・JIS照明基準総則 Z9110-2010.
・Panasonic.“美術館・博物館の照明”.照明設計サポートサイト.
(https://www2.panasonic.biz/ls/lighting/plam/knowledge/document/0209.html)
(博物館実習生:大塩)