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  • 絵本で読む「草枕」 前編

    漱石山房記念館ミュージアムショップで扱う書籍の中に、
    『絵本 草枕~KUSAMAKURA~』(以下、『絵本 草枕』)という1冊があります。
    《通常展》テーマ展示 夏目漱石「草枕」の世界へ―絵本・絵巻・挿絵にみる「草枕」-
    (会期:令和4年7月7日(木)~10月2日(日))では、この本の原画も展示されます。
    『絵本 草枕』を発行するHalf wayの小須田祐二さんにお話を伺いました。

    『絵本 草枕~KUSAMAKURA~』
    原作:夏目漱石 脚色:結城志帆 画:いとう良一
    発行:小須田祐二(「草枕」絵本化プロジェクト)

    ―『絵本 草枕』を出版しようと思ったのは、どのようなきっかけですか?
    (小須田)若い頃から漱石の「草枕」が好きで、いつもお風呂に入りながら文庫本を何度も読み返していました。
    「草枕」の中で、画工が書物を読んでいると那美さんが「御勉強ですか」と声をかけてくるシーンがあります。
    画工は「勉強じゃありません。只机の上へ、こう開けて、開いた所をいい加減に読んでるんです」と答えますが、
    それと同じように私も適当に開いた部分をパラパラと読んでいました。
    2016年が漱石没後100年、2017年が漱石生誕150年ということで話題になり始めた頃に、
    ふと思いついて「草枕」を初めて最初から最後まで通して読んでみました。
    あらためて読み返すと、特に大きな事件は起きないけれども、ほんわかとした美しい物語だと思いました。
    絵本にしてみたら、この美しさが見えてくるのでは?と思ったのがきっかけです。

    ―『絵本 草枕』は小須田さんの目論見通り、とても美しい本ですね。
    (小須田)画を担当した、いとう良一さんとはある展示会で出会ったのですが、
    作品の優しい雰囲気が気に入りまして、直感的に「草枕」の絵本の画を依頼しようと思いました。
    漱石の原文を活かしながら絵本用のテキストを作成して、それを元にいとう良一さんに画を描いていただきました。

    Ⓒいとう良一

    ―最初はクラウドファンディングを利用して出版されたと伺いました。
    (小須田)2016年11月にクラウドファンディングを開始して、2017年4月に本が出来上がりました。
    最初は500部限定で出版して、クラウドファンディング支援者の皆さまに、
    物語の舞台になった熊本県玉名市や小天(おあま)温泉の特産品と一緒にお渡ししました。
    その後、ご好評をいただいて、玉名市の文化施設「草枕交流館」で販売したり、
    小天温泉の旅館「那古井館」では各部屋に置いてくださるようになりました。
    漱石山房記念館では現在、ミュージアムショップで販売しているほか、
    ブックカフェや図書室で自由に読んでいただくこともできます。
    どうぞお気軽にお手にとっていただければと思います。
    後編へつづく)
    ※引用文の表記は新潮文庫『草枕』(昭和25年初版、平成17年改版)に従いました。

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  • お庭のザクロが実ってきました

    漱石山房記念館の前庭には、漱石の作品にちなんだ植物が植えられています。
    初夏の今時期は、ザクロの鮮やかな赤い花が受粉を終えて、
    果実に成長するかわいらしい姿を見ることができます。

    ザクロは、漱石作品『それから』の中で、
    主人公・代助の気分を表す場面に登場します。
    「柘榴(ざくろ)の花は、薔薇よりも派手にかつ重苦しく見えた。
    緑の間にちらりちらりと光って見える位、強い色を出していた。
    従ってこれも代助の今の気分には相応(うつ)らなかった。」

    (夏目漱石『それから』岩波文庫、138頁)
    暗調を帯びた気分の代助に、ザクロの花は、
    「余りに明る過(すぎ)るもの」、堪えがたいものと映ります。
    確かに、ザクロの花は濃い緑の葉の中で、
    小さいながらも力強く明るく咲いているように見えます。
    漱石山房記念館にお越しの際は、ぜひお庭の植物にも注目してみてください。
    小説の世界が広がります。

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