吾輩ブログ 一覧
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「吾輩は○○である」
夏目漱石による最初の長編小説「吾輩は猫である」は、
日本文学の作品において恐らく最も有名なタイトルの1つでしょう。
猫が「吾輩」と自称するタイトルはインパクトがあり、
現代まで様々なパロディ作品を生んでいます。
有名なものでは、門下生の内田百閒による
「吾輩は猫である」の続編「贋作吾輩は猫である」があります。
その他のパロディ作品も、やはり猫に関するものが多く見られます。
しかし、「吾輩は○○である」というタイトルは、紹介したい対象になりきって物語を作ることができ、
また話の大まかな紹介まで一気にできる簡便さもあるためか、
猫だけでなく多岐にわたり利用されています。
国立国会図書館で検索してみると、1冊の本の形になっているものだけでも多くありますが、
中でも目に付くのは、やはり動物系です。
「吾輩は馬である」
「吾輩は猿である」
「吾輩は亀である」
「吾輩はらんちゅうである」(らんちゅうは金魚の一種)
「吾輩は蚕である」
などが見当たりました。猫と対をなす人気のペット、
犬に至っては「ハスキー」「ドーベルマン」など犬種が指定されているものまであります。
無生物としては、「ロボット」「教卓」「水」「ロンドン」などがあり、
「細菌」や「ウイルス」まで「吾輩」を自称しています。
ちなみに、古くから猫の恰好の獲物とされ、
対比されることの多い「鼠」については、
「吾輩ハ鼠デアル : 滑稽写生」というタイトルの作品が明治40(1907)年に発表されています。
(影法師『吾輩ハ鼠デアル : 滑稽写生』 大学館)
本家「吾輩は猫である」の第1章に当たる部分が発表されたのが明治38年ですから、
かなり早い段階で登場しています。本家「猫」の影響力や人気が伺えます。これらのパロディタイトルの内容を概観してみると、
本家同様、様々な「吾輩」に人間社会を観察させ、批評させることに主眼を置くもののほか、
動物や無生物の「吾輩」に自らの特色、出自、生態や人間社会との関りなどを詳細に語らせる
「自己紹介もの」も多いことが分かります。
更に、これらとは一線を画した「吾輩は」の定番に、
人間である著者当人の現実世界での立場・職業を直截に表したエッセイがあります。
この場合は「路線バス運転手」など、具体的な職業・立場が明示されています。
「吾輩は猫である」というタイトルは、猫のような可愛らしい動物や、意思を持たない無生物が
「吾輩」という大げさな言葉で自称しているところが可笑しみを増しているようにも感じられます。
そんなところも、「吾輩は○○である」タイトルがいまだに生み出され続けている理由なのかもしれません。テーマ:漱石について 2022年12月22日 -
マンガで知る漱石
『漱石山房記念館だより 第3号』で「漱石山房記念館訪問記」を描いていただいた、
漫画家・香日ゆらさんによる文豪コメディ『JK漱石』の第1巻が12月8日に刊行されました。
※『漱石山房記念館だより』のバックナンバーはこちらをクリック『JK漱石』は夏目漱石が記憶を持ったまま、100年後の現代日本に生まれ変わり、
女子高生として生活する……というストーリーのマンガです。香日ゆらさんは『先生と僕-夏目漱石を囲む人々-』(全4巻/KADOKAWA)や、
『漱石とはずがたり』(全2巻/KADOKAWA)、
『夏目漱石解体全書』(河出書房新社)など、
今までにも漱石に関する書籍を多数刊行されています。
今回の『JK漱石』はコメディ色の強い作品ではありますが、
漱石に関するさまざまな知識が豊富に織り込まれていて、
漱石の生涯についてご存知の方は、ちりばめられたオマージュを楽しめます。
漱石についてよく知らない方でも、元ネタについて丁寧に解説されていますので、
マンガを読みながら知識を深めることができるのではないでしょうか。この単行本第1巻に収録されている第2話の扉背景には、
漱石山房記念館の再現展示室を描いてくださいました。
漱石の書斎の細かい部分まで取材していらっしゃいますので、
ぜひ実際の再現展示室と見比べてみていただければと思います。『JK漱石』をはじめ、香日ゆらさんの著作は、
漱石山房記念館1階のブックカフェと、地下1階の図書室でお読みいただけます。
また、漱石山房記念館ミュージアムショップでは香日ゆらさんデザインの
「漱石作品湯呑」(税込み1,300円)も販売中です。
※こちらの商品は通信販売には対応しておりません。テーマ:その他 2022年12月20日