現在、当館では《通常展》テーマ展示「漱石と新宿 神楽坂編」を開催しています。
今回は、夏目漱石とゆかりの深い新宿のなかでも神楽坂を取り上げています。
当館のある早稲田南町からも程近い神楽坂は、漱石にとって、買い物、食事、寄席通いなど、日常生活のなかで親しんだまちでした。
明治44年、漱石44歳の6月の日記にこのような記述があります。
昨夕紀尾井町を散歩。帰りに牛込見附迄来て、西の空を見るとどす黒い雲が一面にひろがって、それが半円を描いて次第に薄くなつてゐる。中心の所は甚だ濃い、稲妻がさす。神楽坂へ来ると、人が駆け出す。手を出して見ると、雨が一二滴あたつた。植木屋露店悉(ことごと)く荷をしまひかける。寺町で早稲田返りの車にのる。(中略)うちへ〔行〕く坂の所から降り出す、家へ這入ると凄まじい雨が〔の〕音がし出した。
漱石の日記より 明治44年(1911)6月14日
「明治37年以前の神楽坂通り」(『新撰東京名所図会』より)
黒い雲と稲妻がさした神楽坂から人力車に乗って、漱石が早稲田南町の「漱石山房」へ帰宅した途端、凄まじい雨が降り出しました。間一髪の初夏のある日の出来事でした。
まもなく関東も入梅をむかえます。突然の雷雨は困り者ですが、雨の神楽坂もしっとりとした風情がありますね。
ぜひ周辺の散策とあわせてお立ち寄りください。
皆さまのお越しをお待ちしております!