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12月9日は漱石忌です
明日12月9日は漱石忌です。
夏目漱石は大正5(1916)年12月9日に、
現在は新宿区立漱石山房記念館が建つ、
ここ早稲田南町の家で49歳で亡くなりました。
今年(2020年)は没後104年になります。当館では昨年に続いて、漱石のお墓がある
雑司ケ谷霊園の文学さんぽを予定していましたが、
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、
残念ながら今年はイベントの開催を見送り、
お墓掃除をしてまいりました。漱石山房記念館から雑司ケ谷霊園へは、
「牛込保健センター前」バス停から都バス白61系統「練馬車庫行」に乗り、
「鬼子母神前」バス停で下車する行き方が便利です。
詳細は漱石山房記念館の受付でもご案内いたしますので、
ご来館の際にお問合せください。テーマ:漱石について 2020年12月8日 -
ボランティアレポート4 漱石山房への小路
漱石山房記念館では、ボランティアガイドが
漱石の書斎の再現展示室の展示解説を行っていましたが、
現在は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、休止しています。
そこで、この吾輩ブログではボランティアガイドによるレポートをお届けしてまいります。いつも見慣れた景色が、ある日ある時、見違えるほどきれいだった……とは、
誰もが経験されることでしょう。私たち一家は2010年4月、ここ早稲田へ当時6歳の愛犬とともに越してきました。
それから昨年5月までのほぼ毎日、
宗参寺から漱石山房記念館を回る小路を愛犬と散歩しました。昨年の麗らかな春の午後でした。
いつも見慣れた漱石山房記念館への坂道が、春の日差しに輝いていました。
毎日散歩する路がまるで違っていたのです。
思わずそこを進みました。漱石山房記念館は小さな丘の上にあります。
行こうとすれば、どこからでも坂道を上ることになります。
上ると通りから一歩、控えた場所にあり、謙虚な佇まいです。
漱石が住んでいた当時の山房も、芥川龍之介の「漱石山房の秋」に
「門をくぐると砂利が敷いてあつて(略)
砂利と落葉とを踏んで玄関へ来ると(略)
蔦の枯葉をがさつかせて、呼鈴(ベル)の鈕(ボタン)を探さねばならぬ」
とあり、やはり奥まっていたということでしょう。
夏目漱石もそんな控えめな人だったのでは、と思わせます。かつて、多くの人々が漱石を訪ねました。
漱石のもとに行けば何かある……と、誰もが何かを求めて坂道を上ったことでしょう。
その時の坂道は、私が見たように輝いていたのではないでしょうか。麗らかなその日、坂の上で私が見たのは、
漱石山房記念館の隣、漱石公園にひっそりと咲く桜でした。
誰に見られずとも、咲く時が来たので……という飾らぬ姿でした。
しばし、その可憐で清らかな美しさを眺めていると、
心の中に、ぽぅっと灯るものがありました。
これを教えたくて、山房への小路が輝いていたのだ、と思ったのでした。
ほのぼのとした気持ちで坂を下り、家へ帰りました。
山房に漱石を訪ねた人々もきっと同じ。
漱石という人に接し、心に何かが灯り、
温かな気持ちを抱えて坂道を帰っていったことと思います。漱石山房記念館は静かに住宅街に溶け込んでいます。
そこへの小路は人や車の往来も少なく、のんびりと散策すれば、
あなたの心にも何か温かいものが灯るかも……。
夕暮れには猫の街灯が優しく導いてくれますよ。※漱石山房記念館のある漱石山房通りには、
平成29年度から新宿区道路課によって猫のモチーフの街燈が設置されています。(漱石山房記念館ボランティア:井上公子)
テーマ:その他 2020年12月1日