令和4(2022)年10月16日付日本経済新聞の文化欄に、
詩人の高橋順子さんによる「漱石の硯」という記事が掲載されました。
高橋さんの叔母である石津信子さんが、
夏目漱石の長男・純一氏宅に家政婦として勤めていた際に譲り受けた、
漱石の遺品の硯についての文章です。
叔母の信子さんの思い出話とともに硯の来歴が詳しく語られており、
現在は漱石山房記念館に収蔵されていることも紹介されていました。
この新聞記事をお読みになった方から、
漱石山房記念館にお問合せを多くいただいています。
当館には漱石の書斎の再現展示室があり、
文房具をはじめとした漱石の身の回りの品が再現されています。
「再現展示」ですので、書斎内の展示品は全てレプリカで、
硯もありますが、これは今回の新聞記事で紹介されたものではありません。
今回の新聞記事で紹介された硯は、
昭和20(1945)年5月、山の手空襲により漱石山房が焼失した後、
焼け跡から出土したものの1つです。
添書の内容から「蓮の花の上に蛙が乗っていた」意匠が施されていたようですが、
戦災による欠損のため、現在は確認できない状態です。
写真をご覧いただくと、確かに硯の縁に蓮の茎のような部分があり、
先の方が折れて欠損しているような様子が見られます。
この欠損した部分に蓮の花と蛙がついていたのでしょうか。
この硯は常設での展示は行っておりませんが、
令和4(2022)年12月1日(木)~令和5(2023)年4月9日(日)に開催の
《通常展》テーマ展示 ああ漱石山房 で展示する予定です。
ご興味を持たれた方はぜひこの機会に、実物をご覧いただければと思います。